心がわり
男と女って 小さなきっかけで 変わってしまう。
毎週 水曜日は ノー残ディで。
行員は みんな 定時で退社する。
私は ほとんど 残業が なかったけど。
男性の行員は 結構 遅くまで 残業していたから
水曜日を 楽しみにしている人も 多かった。
銀行を出て 駅まで 歩いていると
どこからか 中井さんが 出て来た。
「藤本さん。この間は 助かったよ。ありがとう。」
自然と 並んで歩く形になって 私は 少し戸惑う。
「いいえ。大丈夫です。間に合って よかったです。」
私の胸は やっぱり ドキドキに包まれて。
笑顔も ぎこちなくなってしまう。
「埋め合わせしたいんだけど。これから 食事 どう?」
「そんな。仕事ですから。気にしないで下さい。」
「何か 予定あるの?」
「予定は ないけど。」
何故 私は はっきり 断れなかったのだろう。
「じゃ 決まりね。ちょっとだけ 電車に乗ってもいい?」
改札を 抜けながら 私は 頷いていた。