心がわり

翌日 いつものように 中井さんと 食事をして。

「昨日は 本当に ありがとうございました。」

お昼の出来事を 私は 改めて お礼する。


「時々 いるから。ああいうお客さん。気にしないで。」

中井さんは 何でもない という顔で 笑う。

「あの時 中井さんが 戻っていて。本当に 助かりました。」

「俺 ヒーローに見えた?フフッ。でもさ 窓口にいたのが 藤本さんじゃなかったら 俺 出ていかなかったなぁ。」

「それ… 公私混同ですよ?」

私は 少し 困った顔で 中井さんを見る。


中井さんは 楽しそうに ケラケラ笑って

「どの口が それを言う?」

と言った。


私は 頬を染めて 俯く。


「あのお客さん 藤本さんに ” この人です! ” って 言っただろ?俺 ちょっと ムキになっちゃってさ。」

私の胸は 甘いときめきで いっぱいで。

何も 言えないまま 中井さんを 見つめる。


「最近 お昼に 戻っちゃうんだ。藤本さんの 顔見たくて。」

私達は じっと 見つめ合う。

「ごめんなさい。私も。」

「えっ?」


「お昼に 中井さんの顔見ると 嬉しいです。」


私は とうとう 言ってしまった。






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