心がわり
12
2連泊して 帰る家は 少し 敷居が高い。
「ただいま…」
リビングに顔を出すと 母が1人で テレビを見ていた。
「お父さんは?」
「さっき 寝るって。部屋に行ったわ。」
意味あり気な顔で ニヤっと 笑う母。
「やぁね。変な顔で 見ないでよ。」
そのまま 部屋に行くのも 少し 気まずくて。
私は ダイニングチェアに 腰を下ろす。
「彼とは うまくいってるの?」
「聞かなくても わかってるくせに。」
「フフフ。まあね。一応 確認よ。」
「お母さん 人が悪いわ。」
「今度こそ お母さんに 紹介してよ?」
「いいけど… あっ そうだ。お母さん 私が 光司と別れた時 私のこと そういう子だと思わなかったって 言ったでしょう?あれ どういう意味だったの?」
「んっ?ああ。あの時 まどか すごい顔してたじゃない。泣き腫らして。お母さん てっきり まどかが フラれたんだと思っていたの。夜中に バタバタ 部屋を 片付けてるし。だから ちょっと覗いたのよ。心配だったから。」
母は 少し言葉を切ると 私の顔を見た。
私は 黙って頷いて 続きを待った。
「そうしたら まどか 好きな人ができたって 言ったじゃない?自分から 光司君を フッたわけでしょう?それなのに あんなに泣いてたから。意外だったの。」
「別に 光司を 嫌いになったわけじゃないし。」
「うん。まどかって 別れる彼のために 泣ける子なんだって。もっと ドライな子かと 思っていたから。」
「光司のために 泣いたわけじゃないわ。色々 思い出しただけよ。」
「お母さん ちょっと 嬉しかったの。良い恋愛してる まどかが。」
私も 母の言葉が 嬉しかった。
「止めてよ。照れるじゃない。親子で こんな話しするの 本当に 恥ずかしいわ。」
私は そっと肩をすくめて 自分の部屋に入った。