心がわり

「お母さん。祥太のこと どう思う?」

「いい子じゃない。しっかりしているし。顔に険がないから。安心したわ。」

「険?なによ それ?」

私は クスッと笑って 母に聞く。


「今 多いじゃない?キレる人っていうの?そういう人って 顔に険があるから。祥太君は 穏やかな性格でしょう?」

「うん。カリカリしてるのは 見たことないかな。」

母は 私とは 違う観点で 祥太を見ていた。


「お父さんも お兄ちゃんも キレる人じゃないから。まどかが 反対のタイプに 惹かれたら嫌だなぁって 思っていたけど。」

「私 キレる人なんて 好きにならないわ。」

「なら 良かったわ。身近にいないタイプって 魅力的に見えたりするから。穏やかな性格が 一番よ。」

母の言葉に 私は 微かに頷いた。


「お母さんは お父さんの 穏やかな所が 気に入って 結婚したの?」

私ばかり 照れくさ思いをしたから

母にも 少し 復讐をしよう。


「そうね。それだけじゃないけど。」

私の思惑通り 母は 少し 恥ずかしそうな顔をした。


「お父さんの どこが 良かったの?」

「いやな子ねぇ まどかって。そんなこと 親に 言わせないでよ。」

「さんざん 私を 冷やかしたんだもの。いいじゃない。教えてくれても。」

「お父さんといると 何か 気持ちが 上がったのよ。」

「上がる?」

「そう。上擦ったような ウキウキする気持ち。そういう人って お父さんだけだったの。」


私は 目を見開いて 母を見つめた。

だって 祥太といる時の私も そうだから…






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