心がわり
13
祥太とは 毎日 職場で 顔を合わせる。
誰にも 内緒で 付き合っているから。
私達は 素気ない態度を 通しているけど。
でも ちょっとした 瞬間に 目が合ったり すれ違ったり。
「中井さん。3番に 電話です。」
祥太宛の 電話を 私が受けて つないだり。
同じ職場にいるのだから 当たり前だけど。
そういう 小さな 接触が 嬉しかった。
誰にも わからないような
小さなサインを 交換し合ったり。
見えないように フォローしたり。
逆に 同じ職場だから 見たくないものも 見えてしまう。
祥太が 他の女子行員と
笑顔で 話していたりすると
私は 嫌な気分になる。
仕事だから 仕方ないけれど。
わかっていても 頭にくる。
それは 祥太も 同じで。
「まどか。最近 横山と仲いいね。」
なんて 小さなヤキモチを妬く。
「もしかして 祥太 嫉妬してる?」
私は 祥太の 同じ感情が嬉しくて 甘く揶揄う。
「まどかは 俺以外の人に 笑顔見せちゃ駄目。」
私を 腕の中に 包み込んで 祥太は言う。
言った後で 祥太は 恥ずかしそうに 私を見る。
「大丈夫。祥太に見せる笑顔は 特別だから。」
祥太の胸から 少し顔を上げて
私は 飛び切りの笑顔を 見せた。