君がいたから
「結愛も辛いんだろうけど、蓮だって、1日中結愛だけを見ているわけには
いかないから難しいな… 」
急患中に結愛が点滴を抜いて、
発作を起こしてしまったことを
すべて知っているかのように言う陽翔先生…
「…病状が改善しているなら結愛ももっと頑張れると思うけど、この前の採血の結果良くなってなかったんだろ? 」
「はい………」
口角を持ち上げながら話す陽翔先生だけど
表情はこわばっている。
「結菜に治療したときはすぐに目に見えるような効果が見られたけど、結愛の場合は抗がん剤が効きにくいみたいだな………」
こないだの採血の結果は良くなっているどころか逆に悪化していた。
脊髄のほうに浸潤した白血病細胞は消えたけど、全体的には重くなっている。
今回強い薬を投与して、もし効果がなかったら…こうやって治療している間にも日に日に悪くなり………
考えたくはないけど、最悪の事態が思い浮かぶ。
「力及ばずで本当にすみません………」
諦めているわけじゃない…
だけど俺がもっとできる医者だったら………
結愛に辛い思いさせないで
陽翔先生にもこんなに心配かけなかったかもしれない………
下げた頭を上げると陽翔先生の真剣な顔が目の前にあった。