君がいたから
抗がん剤がもし効かなくて骨髄移植とかもできなければ
結愛は余命はあと3ヶ月ほどだ。
医者になって助けられない命もたくさん見て、
慣れることはなくその度に悔しい思いをした。
だけど、こんなにも自分が壊れてしまいそうなほどに
悲しくて悔しいのは初めてだ。
「結愛………」
思い出すのは結愛のクリスマスのときの笑顔。
あんなふうにいつも俺のそばで結愛に心の底から笑ってほしい。
いや、それが叶わないのなら俺の命と交換でもいいから、
なんとか助けてあげたい。
「うっっ…… 」
前も見えないほど涙が出て泣き崩れていると、陽翔先生が手を引っ張って、立たせてくれた。
「蓮、勘違いしないで。
たとえ抗がん剤が効かなくても、諦めるなんてひと言も言ってないから
俺がなんとかする。
今回の治療が終わって、検査結果が出たら話す 」
それだけ言って、
陽翔先生は病室を出ていってしまった。
もしかして…陽翔先生は………
『俺がなんとかする』
その言葉で1つの手段が浮かぶ。
でも、その方法はリスクが高いということも知っている。
成功率も高くない上に…
ただでさえ結愛は弱っているから、そんな治療をしたら、治療によってではなくて
体力が持たなくて死んでしまうかも
そんなことまでも脳裏に過るほどの危険なことだった。
だから、陽翔先生も具体的には言葉に出さなかったんだと思う
今はとにかく抗がん剤が効くのを祈しかない…
そして、何があっても結愛の力になる。
そう固く決意した。