君がいたから


「グスン…怖い…痛いのやだ………ヒック 」


「結愛、痛いの怖いと思うけど、
終わったらギューしてあげるから頑張ろう? 」


背中に汗がダラダラと流れているみたいに

寒気がする。

処置室の少し固いベットの感触で

初めてこの検査をしたときの恐ろしい痛みを

思い出してしまう。


怖いよ。 嫌だ。

弱い心が、そう叫んでいるとき、ポン…と髪の毛に蓮の手がのせられる。


「よしよし、そう言っても怖いに決まっているよね 」

そしてそのまま、私の顔にスルリと手が移動して、蓮の体温が顔に伝わった。


そうだよね、これが終われば、
この蓮の優しい温もりで包んでくれるんだよね…



「………頑張る」


自分の手で涙をふく。


「えらいな。じゃあ、麻酔するからなるべくリラックスして。深呼吸だよ 」


言われたとおりに深呼吸していると
ヒンヤリと冷たい消毒液がぬられて
背中に鋭い痛みを感じる。


「っ………」

歯を食いしばって痛みに耐える。


「我慢できて、偉いじゃん

次の本番の針さすね 」


「う、………うん 」



グリグリってされる感覚がしたとき



変な水みたいなものが顔をつたる感覚した。

目からこぼれる涙ではない。


気のせいか雨の日に鉄棒を嗅いだような

においがまで漂ってくる。


鼻の下あたりからこぼれるような…変なもの


なにこれ…?


恐る恐る、手を当ててその液体を見ると真っ赤な血だった。










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