君がいたから

「結愛…注射終わったよ。
あっ、さっきの話だけど、俺はもう立ち直っているし
そんな悲しそうな顔をすんな 」


私の髪の毛をクシャクシャ撫でる蓮だけど

少しだけ表情が曇っている。

悲しい思い出を話させて申し訳ないよ…


「本当にごめんね 
でも、辛かったら無理しないで 」


いつも蓮がやってくれるのを真似して

蓮の背中をポンポンたたく。


「結愛、母親のことが悲しくないのは嘘
だけどね、こうして医者になれたのは本当に良かったと思う 」


少しだけ微笑んで私の目を見てくれる蓮


「だって、医者にならなかったら結愛に会えなかったから。

それに今回は陽翔先生と結愛の頑張りのおかげで俺は何もできなかったけど、こうやって元気な結愛がそばにいてくれて
今はすごく幸せだよ 」


だんだん表情も明るくなってきて、
いつもの蓮に戻ってきた。


何もできなかったなんて言うけど
私が病気と闘えたのは蓮のおかげだよ。

蓮がいなければ、
ずっと現実逃避したままで治すなんて諦めていたもん


医者の蓮はたまに怖いなんて思ったこともあったけど、

蓮みたいに患者に寄り添ってくれる
医者ってステキだと思う。


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