あなたに月下美人の花を……
着物を着た祖父母に言われ、かぐやはソファに腰掛ける。かぐやの両親はかぐやが幼い頃に事故で他界しており、かぐやは祖父母に育てられてきた。

「話とは何でしょうか?」

かぐやは祖父母に訊ねる。すると祖母が一枚の紙を差し出した。

「二人で話し合ったんだけどね、あなたには狭い世界だけを見てほしくないの。だからここで学んできなさい」

その紙はイギリスにある名門校の転入手続きのものだった。イギリスに留学しろということだ。

「……わかりました」

かぐやは逆らうことなく淡々と言う。二人には幼い頃から逆らえない。目上の者に逆らうなと教えられたためだ。

「よろしい。来月にはイギリスに行くから準備だけしておきなさい」

祖父に言われ、かぐやは「はい」と返事をして書斎を出る。鬱陶しくアプローチをしてくる月也たちから離れられるというのに、なぜか胸がズキズキと痛んだ。

「……どうして」

かぐやの問いに答えてくれる者などいない。かぐやは自分で考え、見つけた答えに涙をこぼした。
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