あなたに月下美人の花を……
「えっ、留学!?イギリスに!?」
月也はかぐやがイギリスに旅立ってからそのことを知った。かぐやは何も話してくれなかった。いつものように冷たかった。
教師からそのことを聞かされ、月也は呆然としながら自分の席へと向かう。今日もアプローチをしようと張り切っていたところだった。
「僕は本気なのに……」
かぐやが愛を受け取ってくれなくても、月也はずっとかぐやを想っていた。いつも家に厳しく縛られ、どこか苦しげだった彼女を自分が笑顔に出来たらと思っていた。でもそれは叶わず、モヤモヤしたものだけが胸に残っている。
「何で言ってくれなかったんだよ……!」
胸に怒りや悲しみがこみ上げ、月也は泣いてしまいそうになる。その時、引き出しの中に一通の手紙が入っていることに気付いた。何の柄もない真っ白な封筒に入れられている。
「何だこれ……」
月也が封筒を開けると、その中から白い何の柄もない便箋が出てきた。月也は手紙の中身を読み始める。