直球すぎです、成瀬くん
……ど、どうしよう、これじゃあ、本返せない………
「ったく誰もいねーのかよ」
ぼそりとこぼした成瀬くんは持っていた本の山をカウンターにドンと置くと、そのままカウンター内に入り、そこにあるパソコンを操作し始めた。
「…っえ、え、な、成瀬くん…?な、何してるんですか……?」
「…コレあったから」
指差す先にあったのは、バーコードが印字されたネームカード。
確か、図書委員の人がいつも首からさげている………本を貸し借りする時にそれを使って、パソコンを操作していた気がする……
もちろんこれは図書委員のみが与えられるもので、それ以外の生徒は持っていない。
…ど、どうしてこれが、ここに………?
ーーーピ
……え……?
突如響いた、電子音。
気づけば成瀬くんはそのカードを勝手に使い、次々と本のバーコードをスキャンし始めた。
「…え、え、な、成瀬くん、いいんですか…?こ、このカードの方が戻ってくるまで、待った方が…」
「悪用してるわけじゃねーし。そもそも待つのも時間の無駄だ」
「……」
…な、何も言えない………
このカードの持ち主を今すぐ探してくることはたぶんできないし、かと言って、せっかく成瀬くんがここまで本を運んできてくれた労力を無駄にすることもできない………
私は何もできず、ただ成瀬くんが、次々と返却処理を終わらせていく様子を見ることしかできなかった。
「…帰んぞ」
「…っえ、」
気づけば鞄を持ってカウンターを出ていた成瀬くんを、私は慌てて追いかけた。