直球すぎです、成瀬くん
これまで数回帰り道で鉢合わせしたのもあり、お互いがおそらく帰る方向が同じであろうとわかっていたせいか、私は自然と成瀬くんと帰る流れになっていることに、校舎を出て少し歩いてから気がついた。
いつもの通学路、隣に百叶ではなく、あの、成瀬くんがいるというこの状況ーーー
特に何の会話もなく……そもそも目すら合わないこの並び、しかも相手は成瀬くん…………普段から会話という会話をしたことがないのに、自然に会話なんて、とてもできない。
私の1歩前を歩く成瀬くんの肩をぼーっと見る。
成瀬くんもずっと黙っていて、私たちの間には、これまでにない環境で沈黙が漂う。
「……おまえ、いつも同じ顔」
「……っえ、…」
…意外にも、その沈黙はその数秒後に、成瀬くんによって破られた。
軽く振り返ってそう言った成瀬くんに、私の足は止まってしまう。
「…つまんねーな。作ったような、笑ってねぇ顔」
「………」
フッと軽く冷たく笑うと、成瀬くんはまた前に向き直って歩き始めた。
……作ったような、笑ってない顔………
そんなこと言ったら成瀬くんだって、いつも何を考えているかわからない表情ばかり………なんて、思う余裕はなかった。
「…わ、私、自分が本当はどう思ってるんだろうって…あれから、考えることが多くなって…」
「……」
口からこぼれた言葉が成瀬くんの耳に届いたのかわからないけれど、歩くのをやめた成瀬くんは私に背中を向けたまま立ち止まった。
「嘘をついてるつもりは、全然なかった、全部本当の気持ちだって思ってました……でも、考えれば考えるほど、わからなくなってきて……」
……あ、また、だ…………
………こんなこと、誰かに話すことじゃない…ましてや、相手は成瀬くんなのに…………
それなのに、私の口からは、次々と言葉が漏れ出てくる。