直球すぎです、成瀬くん
それに比べて私はどうだろう。
……いつも周りを見てばかり。合わせよう、嫌われないようにって、いつも必死で。
それがいつの間にか、当たり前のように私に染みついていた。
そんな私の言葉に、ちゃんと意思はあったんだろうか………
これが私、私の本当の気持ちだって、ちゃんと言葉にできたこと、あっただろうか…………
「……成瀬くん、楽しいって思ったこと、ありますか…?」
私の問いかけに、目の前の成瀬くんは一瞬目を見開いたあと、すぐに眉間にシワを寄せた。
「…あ?何おまえ、喧嘩売ってんの?」
「…っあ、い、いえ…っ、そうではなくて……」
「本気で楽しいって思ったことねーやつに言われたくねぇわ」
そう言うと、成瀬くんは私から視線を外した。
「どうせおまえの言う楽しいって、言葉だけ。周りに合わせて、テンプレみてーに言ってるだけだろ」
「…もしかしたら、そうだったかもしれないです。自信がないので……でも、思い出したら、全部楽しかったんです、楽しいって思ったら、楽しくなることだってあるんです」
「……何それ」
私の言葉に、成瀬くんはまたこちらを向いた。
意味がわからない、といった表情に見える。
「…だけど……こ、これからは、ちゃんと、自分の気持ちに向き合いたい…プラスもマイナスも、どんな感情も、全部自分の気持ちだって、思えるようになりたい」
「……」
「…私も成瀬くんみたいに、ちゃんと言葉にできるようになりたいです」
………怖い。
けれど、変わりたい。
……この気持ちはきっと、紛れもない、今の私の本心だと思えるから………
「……あっそ、じゃあそーすれば」
ふいと目を逸らしてそう言うと、すぐに背中を向けて行ってしまった。
…今の言葉だって、決して柔らかくもあたたかくもないのに、私の心の中のずっと奥で絡まっていた硬い糸が、ほんの少しだけ、緩んだ気がした。