直球すぎです、成瀬くん

12





人はすぐには変われない。



そんな言葉があるけれど、私は何となく、あまり信じていなかった。

自分が変わりたいと思えば、自ずとちゃんと変わっていけるとーーー



「柚〜、行きたいとこある?」

「…み、みんなの行きたいところ、に…い、行きたい……かな、」


……な、何も変わっちゃいない……………



あれから、頭でのイメージトレーニングは毎日欠かさずしている。自分の思ったこと、気持ち、ちゃんと自分の言葉にできるように……


なのに、いざ口に出そうとすると途端に、みんなの好きなものじゃなかったらどうしようとか、空気読めてない発言になってしまわないか、とか………

これまでの私が無意識にやっていたことを、ここにきて強く意識してしまい、イメージしていた展開はあっさりと崩れる。



「オッケー、じゃ、ボウリングに決定〜!」



せめてもの抵抗、とまではとても言えないけれど、今までだったら「合わせるよ」だったのを「行きたい……かな」に変えられた今回、私はまだマシ………

そう思うしか、日々の変化なしの自分をかばってあげられなかった。


行きたい、で止めたらいいのに、最後耐えきれなくなって、結局語尾に付け足してしまう………


思わずその場でうなだれると、肩にポンと感触。


「柚、どうしたの?具合悪い…?」


「…っあ、ご、ごめん、大丈夫…!」


百叶が、少し心配そうに私を見ていた。

私は慌てて首を振ると、教室のドア付近で振り返ったまりなちゃんと玲可ちゃんから声が飛んでくる。


「2人とも〜行くよ〜?」

「あ、うん、今行く…!」



……ボウリング中は、ちゃんと自分の気持ち言う…………!


その声に答えた百叶の後ろ姿を見ながら、私はそう決心して教室を出た。




< 105 / 132 >

この作品をシェア

pagetop