直球すぎです、成瀬くん
そんな宮城くんを横目に、私は机にかけてあった鞄を持ち上げ、席を立つ。
「…百叶、帰ろう」
「…えっ…あ、うん」
私の姿に少し驚いた様子の百叶は、ちらりと後ろを振り返る。
「…でも、いいの?成瀬くんたち」
「…えっ…?」
その視線の先には、未だごはんに行く交渉を続けている宮城くんと、気怠そうな成瀬くんの姿。
「…だ、大丈夫だよ」
…宮城くんに少し話しかけられただけで、あくまで会話の中心はあの2人。あの場に、私は必要ない……
「…そう?なら、帰ろっか」
そう言って立ち上がった百叶のあとに続き、私も教室を出た。
「西内さん」
「っ、!」
そのまま昇降口へ向かおうとした時、グン、と右腕を引っ張られる感覚がした。と同時に、私の少し前を歩く百叶を呼ぶ、低い声が背中から飛んでくる。
「……え………、」
「悪いけど、こいつちょっと借りる」
…な、成瀬くん………!?
そっと振り返ると、私の腕を掴んでいたのは、成瀬くんだった。
いつも通り、何を考えているのかその表情からは読み取れないけれど、強いて言えば、少し不機嫌そうに見える。
「…っえ、え…!?」
借りる、と言うなり私の腕を引くと、そのまま昇降口とは反対方向に進んでいく成瀬くん。百叶の焦った声が聞こえた。
「ちょっと蓮くん俺とのデートはどーすんだよっ!」
宮城くんの声も飛んできたけれど成瀬くんは少しも気にする様子を見せず、足を止めることなく私をどこかへ引っ張っていく。