直球すぎです、成瀬くん



「…っあの……っ」



ようやく腕が解放され、着いた先は、資料室。

…とは言っても、使わなくなった教材や行事の時くらいしか使わない道具などが保管されている、空き教室。

廊下の1番奥にある上にほぼ使われていないので、通称物置と呼ばれている教室だった。



「……な、何ですか……急、に………」


じ、と私を見下ろすその視線が刺さって、見上げていた私の目線はするすると泳ぎながら宙へ。


突然引っ張られたせいで、一緒に帰るところだった百叶を置き去りにしてしまい、それに対して怒りの感情が少しだけ湧いていたのに、その鋭い眼を見てしまったら、そんなものは一瞬で消えてしまった。



「……」


黙ったまま、何も発さない成瀬くん。


……い、一体、何のためにここに………?



……百叶、待たせてる………は、早くここから、出ないと………


私は手のひらを強く握ると、意を決して、成瀬くんの顔を見上げた。



「…あの、よ、用がないなら…」

「俺に高らかに宣言した割に何も変わってないけど」

「………え……?」


変わらず刺すような眼を私に向けた成瀬くんは、続けた。


「黙って見てればずっと今までの繰り返し。俺はあと何回再放送見ればいーの?」



………な、な……に、急に……………


突然、口を開いたかと思えば全く予想していなかった言葉が降ってきて、私は何も言えずに、ただただ成瀬くんの顔を見ることしかできない。



「おまえ、変わる気ねーだろ。どうせ、周りがどう思うとかすぐ顔色伺って、結局言うの諦めてんだろ」

「……あ、諦めてる、わけじゃ…」

「だったら変われんだろ」


強い口調に、私は思わず身を固くした。




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