直球すぎです、成瀬くん
恐る恐る顔を上げて、私はその声の主を見上げた。
「あ、やっぱそーだ」
そこには、さっきまで私の左斜め前にいたその人が、挿していたイヤホンを手に私の前に立っていた。
う、嘘………や、っぱり気づかれてた………?
ど、どうしよう…………、と、とにかく、まずは謝らないと……!
「あ、あの、ごめ…」
「いたよな、前の方に固まってた女子ん中に。すげー周りの顔色ばっか気にしてるやついんなと思ってた」
「っ、」
目の前のその人は、何を考えているのかわからない表情を崩すことなくさらりと言った。
……な、なに、この人………いきなり………何を…………?
初対面の相手には失礼のないようにと心がけてきたけれど、相手に合わせようにも、一体どう合わせればいいのか全く浮かんでこない。
何せ初めて顔を合わせて初めて言葉を交わすこのタイミングで、突然こんなことを言われたことがなかったから……
どうしたらいいのかわからず、私は小学生以来のプチパニックを起こした。
…………ど、どうしよう……な…何て返せば…………?
頭をフル回転させて、この言葉に対する正しい回答を必死に探す。
ーーーと、急に耳の中に入ってきた鳥の鳴き声。
信号が、青に変わった。
はっと顔を上げると、さっきまでそこにいたはずの姿はなかった。
私は1人で俯き、突っ立っていた。
……え、何だったの…今の…………?
私は急に体の力が抜けたのを感じた。それで、今まで力が入っていたことに気づいた。
私はふらふらと、信号を渡り始めた。
渡り切ったその遥か先に、先ほどの人の背中が見えた。
…と同時に、私の頭の中は後悔で埋め尽くされた。
…さっきの私、どう考えても絶対に、失礼だった………すぐに返事できなかったし、それに見てたこと………ちゃんと謝れてない…
ああぁ………最悪だ……………
自然と目線が下がる。歩幅も狭くなって、ペースが落ちる。
……制服、同じだった………きっと学校のどこかにいるはず…………明日すぐに探して、謝らなきゃ…………
じゃないときっと、嫌われる………………