直球すぎです、成瀬くん
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「柚ー、何してるの?誰か探してる?」
「っえ、あっ、いや…なん、でもない〜」
翌朝、学校の昇降口でそれとなく周りを注視して、昨日の人を探した。もしかしたらばったり会えるかもと思って。
……が、そう簡単に見つけられるわけがない。
学年こそ3つしかないが、1学年につきクラスは8つ。
まあまあ多い人数に、全ての学年が使うこの昇降口は毎朝生徒でいっぱいだ。
そんな中昨日の人たった1人を探す目的で、きっと不自然と捉えられても仕方がないくらいゆっくりと時間をかけて靴を履き替えていたものだから、一緒に登校していた百叶は小首を傾げながら私に問うた。
……先輩っぽかったし、やっぱり靴箱は離れてるよね………
この辺りにはそれらしき姿は見つからなかった。
なら行こ、と声をかけた百叶に続いて、私も教室へと向かった。
「ちょっと成瀬くん?昨日みんな提出したプリント、あなただけまだ出てないんだけど」
「…あ、すんません、明日出します」
………えーーーーーー
今日も1日、授業の進め方の説明などを受けるばかりだった。
聞き逃さないようにと真剣に先生の話を聞きながら、気づけばあっという間に5時間目が終わった。
次の6時間目は早速何かの行事の説明がされるらしいと、クラスの中心的存在になりつつある男女グループが、どこから仕入れた情報なのか話しているのが聞こえた。
そんな会話を聞きながらの束の間の休み時間。私は百叶と彼女の席で雑談をしながら過ごしていたら、教室に入ってきた担任の先生が1人の生徒に声をかけたのが聞こえた。
それに何となく、返事をした声の主に目を向けるとーーー
…え、う、嘘………!!
私は咄嗟に、振り返った顔を元に戻した。
驚きで、急に心臓がバクバク脈を打つ。
返事をしたその声の主は、私が朝から探していた、昨日のあの人だった。