直球すぎです、成瀬くん




「こんな日につめてーもん食ってんの、アホらしーな」


隣からそんな声が聞こえて、私は手に持ったカップを見つめた。


………確かに、もう11月半ば。冬が近づいてきているこの季節に、どうして私はジェラート屋さんなんて言ってしまったんだろう…………


店内のイートインスペースの小さなカウンターに並んで、私は何も言うことができず、ただ黙々とジェラートを口に運んだ。


店内にはお客さんは私たち以外いない。

それもそうだよね…と思うと、尚更言葉が出てこなかった。



「別に、食って終わり、でもいんじゃねーの」

「……え…」


不意に、成瀬くんが口を開いた。


「普通に話すだけでも、友達となら楽しいんじゃねーの」

「……」

「全部のことに理由探したってキリねーよ。別に理由なん、たいそうなものなくたっていいだろ。俺は、これ食べながら何となく話したかった、これだけで十分だと思うけど」


ごちそうさま、と食べ終えたジェラートのカップを置くと、成瀬くんはポケットからスマホを取り出した。



……そんな風に、考えたこと、なかった……

…自分から何かを言ったり、行動を起こそうとしたりするには、必ず、ちゃんとした理由と内容がないといけないと思っていた。

そして、相手がそれをどう思うかも、いつも気にしていた………


だから成瀬くんが言った言葉が、私には新鮮で、衝撃的で……カップを持つ手の温度が上がった気がした。じわり、と食べかけのジェラートが(ふち)から溶け始める。



「……あの、成瀬くん」

「……ん?」


スマホを操作していた成瀬くんが、顔を僅かにこちらに向ける。


「…ありがとう、ございます」

「……早く食えよ、溶けてんぞ」


鼻で軽く笑った成瀬くんは、すぐに目線をスマホに戻した。

ジェラートは徐々に溶けていて、私は慌てて残りを口に運ぶ。



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