直球すぎです、成瀬くん
言いながら、机の上を覗き込む成瀬くん。
…い、今、何て…………
「……め、めんどくさいって、何か、あったんですか…?」
少し動揺したのを誤魔化すようにそう訊くと、成瀬くんは小さくため息を吐いた。
「…宮城が、この時期になって試験範囲教えろって。帰ろーとしてたのに急にあいつの教室連れて行かれて」
「……そ、そうだったんですね…」
何となく、その宮城くんの姿が目に浮かんで、少し笑ってしまう。
「しょうがねぇから教えてやってんのに、あいつ1ミリも理解する気ねーから」
心底面倒くさそうに、今度は大きなため息を吐いた。
もともと、感情の読み取りづらい成瀬くんだけれど、ここ最近、少しずつわかるようになってきた気がする。
……ただそれは、気怠そうとか不機嫌そうとか、面倒くさそうとか、どちらかといえばマイナスなものばかりだけれど…
「…優しいですね、そんなこと言いながらも、ちゃんと教えてるの」
面倒だと言いながらも、ちゃんと教室まで行って教えているなんて、きっと本心では、本気で嫌だとは思ってないんだろうな……
そんな風に思えて、何だか微笑ましくなって思わず口角が上がってしまう。
「は?別に優しくねーよ、あいつどこまでもアホだし覚える気ねーし、どうやって高校入ったんだよってくらいカンタンな問題すら解けねーし清々しいほどのアホ、あんなん教える気失せる」
妙に早口でまくし立てる成瀬くん。一気にそう言うと、軽く前髪に触れた。
「…あの、成瀬くん…言葉がちょっと、ストレートというか、鋭いというか…そ、そこまで言わなくても…」
「俺みてーになりたいって言ったのどこのどいつだよ」
「…ご、ごめんなさい…」
低い声で私を見下ろした成瀬くんに、思わずビクリと肩が上がった。