直球すぎです、成瀬くん
……い、いけない、調子乗った、私…
いくら成瀬くんが、思ったこと言っていいって言ってくれたからって、さすがにあれは言いすぎたよね……
「…あ、あの…ごめんなさい、本当に…」
「別に。そんな感じでいんじゃね?」
「…え……」
「じゃ俺帰るわ」
そう言うと、颯爽と図書室を出ていってしまった。
「お待たせ柚〜!」
「はい、これ差し入れ」
入れ替わるようにして戻ってきた3人の声で、はっと顔を上げる。
「…え……これ、」
「柚好きそうって、百叶が見つけたんだよね〜」
百叶から渡された小さな箱。
「…チョコレート…ありがとう、百叶…!」
「どういたしまして」
にっこりと笑った百叶につられて、私も口元が緩む。
「さて、再開しますかー」
「よっし、頑張ろ〜」
腕まくりをしたまりなちゃんの言葉で、私も再びシャーペンを握った。
しばらく黙々と勉強を進めていたけれど、もらったチョコレートを食べよう、とふと顔を上げる。と、図書室のドアの向こうに人影があるのに気づいた。
それは鞄を持った成瀬くんで、廊下を1人、昇降口に向かう姿が見えた。
……あ、本当に、帰っちゃうんだ……
そう思いながらチョコレートの包み紙を開けると、その直後に、宮城くんが廊下を走っていく姿が見えた。
少しして、来た廊下を戻ろうと懸命に成瀬くんの鞄を引っ張る宮城くんの姿。
それに、嫌そうな顔をしながらも戻っていく成瀬くんの姿ーーー
……ほら、やっぱり、優しいよ、成瀬くん。
その光景に、私の口角は自然と上がってしまっていた。