直球すぎです、成瀬くん
「はいじゃあ答え合わせするよ、隣の人とプリント交換してー」
…短いようで長かった1時間が過ぎた。
先生の声で、私はふっと、力んでいた手を緩めた。
解き方も計算も合っているかわからないボロボロ状態で、私は何とか空欄だけは作るまいと、必死でよくわからない計算式を書き連ねた。
先ほどと同様、前から解答のプリントが回ってくる。
「ん」
「……え…」
「さっさと受け取れ、でおまえの渡せ」
「えっ、あっ、はいっ、すみませ」
「うるせぇ」
横から長い腕が伸びてきて、自分のプリントを私の机に置くと、渡す間もなく、やや乱雑に私のプリントを持っていった。
机の上に置かれた成瀬くんのプリントに目を移す。
裏表、全部の問題にしっかりと回答が書かれている。
………それにしても成瀬くん、字が綺麗だな……………
鋭く乱暴な口調とは裏腹に、書道でも習っていたのかと思うほどの綺麗に整った字に、私は思わず見惚れてしまった。
「おい」
「っはい…っ」
「何してんの、さっさとプリント返してくんない?」
「え、」
「おまえまだ丸つけしてねーの?何してんの、何でそんな遅いの?」
「す、すみません…!」
まくし立てる成瀬くんに圧され、私は慌てて答え合わせを始めた。
……………え、す、すごい…………………
成瀬くんの回答は、全問正解だった。
え、解き終わったの早かったよね………!?
早い上に、頭もいいなんて……………
「終わったんならさっさと返せ」
「…っあ、ご、ごめんなさ」
「おまえ、優等生みたいな見た目してんのにアホなんだ」
「………」
………あ、アホ……………って、言われた、よね、今…………………
机に戻ってきた私のプリント。
丸の数は………半分くらい。それでも半分は合ってたんだと少しほっとしたけれど…成瀬くんに言われた言葉は刺さったまま。
アホ…………か、そうだよね……時間余裕で全問正解した成瀬くんに比べたら、私は十分アホだ………………
「じゃあ15分休憩ねー」
先生の言葉に、次々と席を立って話し始めるクラスメイトたち。
成瀬くんは立ち上がると、部屋を出てどこかへ行ってしまった。
私は目の前のプリントを、ただぼーっと眺めることしかできなかった。