直球すぎです、成瀬くん




交流会らしいことはほとんどしないまま、最終日を迎えた。ただいま午後5時。

最終日の夜にしてようやく、交流会らしく学年みんなでバーベキューの準備をしている。


それまでは私服だったけれど、暗黙の了解なのかみんな学校指定のジャージに着替えて、気合十分に外へ飛び出して行った。

私も百叶もそれにならって、ジャージに着替えた。


学年全員で役割分担をして、火起こし係や食材準備係、焼き係などそれぞれの仕事をしながら、同じ食材準備係になった百叶が隣でふう、と息を吐いた。


「何だかんだであっという間だったね」

「うん、思ってたより早かったかも」


話しながらなのに、玉ねぎを切る百叶の手際があまりによくて、私は思わず見入ってしまった。


「柚、そんなにガン見されるとちょっとやりづらいんだけど…」

「えっ、あ、ごめん…」

「いや、いいんだけど…玉ねぎ切るのそんなに珍しい?」

「や、違うの、トントンスムーズに切ってるからすごいなぁって思って」

「そう?」

「…あ、やっぱり、妹さんたちのためにごはん作ること多かったから?」

「あーそうかも。小さい頃から包丁は使ってたから」


そう言いながら、残りの玉ねぎをあっという間に切っていく。

すごいなぁ…やっぱり、百叶はすごいな、何でもできるんだもん。




「っねえ〜2人とも!これ見てヤバくない!?」

「……えっ、どうしたのそれ…!」


後ろから声をかけられて振り向くと、うちわを片手にまりなちゃんと玲可ちゃんが立っていた。

そして、学校指定の白いTシャツには、2人とも黒い汚れがついてしまっている。


「どっ、どうしたの、それ……?」

「火起こししてたら気づいたら…ってカンジ!」

「みんな適当に仰ぐから灰が飛んでしょうがないのよ」

「えっ、てか玲可、ほっぺ、黒くなってる!」

「嘘……てか、まりなも鼻黒くなってるよ」

「うそやだ萎え、玲可トイレ行こ!」


まりなちゃんはそう言うと、玲可ちゃんを引っ張って建物の中に走って行った。


< 25 / 132 >

この作品をシェア

pagetop