直球すぎです、成瀬くん
交流会らしいことはほとんどしないまま、最終日を迎えた。ただいま午後5時。
最終日の夜にしてようやく、交流会らしく学年みんなでバーベキューの準備をしている。
それまでは私服だったけれど、暗黙の了解なのかみんな学校指定のジャージに着替えて、気合十分に外へ飛び出して行った。
私も百叶もそれにならって、ジャージに着替えた。
学年全員で役割分担をして、火起こし係や食材準備係、焼き係などそれぞれの仕事をしながら、同じ食材準備係になった百叶が隣でふう、と息を吐いた。
「何だかんだであっという間だったね」
「うん、思ってたより早かったかも」
話しながらなのに、玉ねぎを切る百叶の手際があまりによくて、私は思わず見入ってしまった。
「柚、そんなにガン見されるとちょっとやりづらいんだけど…」
「えっ、あ、ごめん…」
「いや、いいんだけど…玉ねぎ切るのそんなに珍しい?」
「や、違うの、トントンスムーズに切ってるからすごいなぁって思って」
「そう?」
「…あ、やっぱり、妹さんたちのためにごはん作ること多かったから?」
「あーそうかも。小さい頃から包丁は使ってたから」
そう言いながら、残りの玉ねぎをあっという間に切っていく。
すごいなぁ…やっぱり、百叶はすごいな、何でもできるんだもん。
「っねえ〜2人とも!これ見てヤバくない!?」
「……えっ、どうしたのそれ…!」
後ろから声をかけられて振り向くと、うちわを片手にまりなちゃんと玲可ちゃんが立っていた。
そして、学校指定の白いTシャツには、2人とも黒い汚れがついてしまっている。
「どっ、どうしたの、それ……?」
「火起こししてたら気づいたら…ってカンジ!」
「みんな適当に仰ぐから灰が飛んでしょうがないのよ」
「えっ、てか玲可、ほっぺ、黒くなってる!」
「嘘……てか、まりなも鼻黒くなってるよ」
「うそやだ萎え、玲可トイレ行こ!」
まりなちゃんはそう言うと、玲可ちゃんを引っ張って建物の中に走って行った。