直球すぎです、成瀬くん
………やっぱり、会話の長期戦はまだだめだ……………
乾杯の合図から1時間ほど経過した。
最初はお肉を食べながら、勉強疲れたーとか明日帰るとか早いねーとか話しながら、上手く相槌も打てていたんだけれど…
話題はいつしか中学の頃の話に変わっていて、そこであった出来事とか印象深いイベントとかの話になり、私の数少ないテンプレートだけでは苦しくなっていた。
「柚ーちゃんと食べてる?てかもういいよ、あたし変わるし!座って座って」
「えっ、や、でも…」
「いーからいーから!」
せめて笑顔を絶やさないように、必死にテンプレを駆使して相槌を打ちながらお肉を焼いていたら、玲可ちゃんが私の手からトングをひょいと取った。
「はいお皿ちょうだいっ」
「わ、」
今度はまりなちゃんが私の紙皿を持ち上げるとそれを玲可ちゃんが受け取り、まだ数枚のお肉が残っている上に、焼けたばかりのお肉と野菜を載せてくれた。
「柚さっきから焼いてばっかで全然食べてないんだもん!食べて食べて〜」
「あ、ありがとう…!」
はいどーぞっ!とまりなちゃんが私の前にそれを置いてくれた。
「でさ、夏休みにさ、学校近くの公園で玲可たちと集まって遊んでたらさ、ね、出たんだよね!」
「……あーね!懐かしー」
目の前のまりなちゃんが目を輝かせながら、その時を思い出したように言った。
「……え、で、出た…って、な、何が出たの………?」
その言葉に、隣の百叶が恐る恐る訊いた。
「え、猫ねこ!野良の子!もうちょ〜〜〜可愛かった!ね!玲可っ」
「可愛かった〜!まりな猫好きだからめっちゃテンション上がってたよね」
「そーなのっ!あれたぶん雑種だったけどさ、目がもうまんまるのくりくりでめちゃくちゃ可愛かったんだよ〜〜」
「……ね、猫……?」
百叶は口をぽかんと開けて、目をぱちくりさせた。
私もその隣で、思わぬ展開に数回の瞬きをしながら、百叶とまりなちゃんを交互に見た。