直球すぎです、成瀬くん
1
満開、とまではいかない桜が咲いた4月。
私は、憧れの百叶と共に合格した高校で、新たな生活をスタートさせる。
ホールに貼り出されたクラス名簿に群がる生徒たちにやや圧倒されながらも、何とか自分の名前を探そうと必死に背伸びをした。
ーーーーあ、あった……!
「柚、何組だった?」
「私1組だったよ」
「ほんと?私も1組!」
やったね、と隣で嬉しそうに笑うのは、今日も艶々の黒いロングヘアを片耳だけに掛けている百叶。
色白で末広二重に小さな鼻。美しい高嶺の花、という言葉が本当にぴったりだ。
「うん、よかった〜」
実は高校の合格が決まってから、密かに毎日神様にお願いしていた。
クラスは絶対、百叶と一緒にしてくださいって。
その願いが無事に神様に通じたみたい……本当によかった。ありがとう神様……!
教室行こっか、と言う百叶のあとについて、私は1年1組の教室へと向かった。
教室の中に入ると既に半分くらいの生徒がいて、近くの席同士で話をして盛り上がっているグループもあった。
すごいな……みんなすぐ、周りの人たちとあんなに楽しそうに話せるなんて…
というより、何かみんな大人っぽい気が……
私と百叶の通っていた中学は学ランにセーラー服だったから、高校生のブレザーは何だかやけに大人っぽく感じる。
それに私だけ、何かまだ中学生感が抜けきってない気が………
どうしよう、何か急に恥ずかしくなってきた…………
「柚?席見つかんないの?」
「……え…?」
ほら、これ、と百叶が黒板に貼られた大きな紙を指差す。
……あ、座席表か…教室の雰囲気に圧倒されて、全然見えてなかった…
「ご、ごめん、座席表、見えてなかった…」
「うそ、こんなにでかでかと貼ってあるのに?」
百叶は形のいい唇の両端をきゅっと上げて言った。