直球すぎです、成瀬くん
自分の席を見つけた百叶はその大きな紙をもう一度確認すると、自らの席へと向かって行った。
…わ、私も早く自分の席見つけて座らなきゃ……
こんな黒板のど真ん中でいつまでも立ってるなんて恥ずかしいし、他の人の邪魔になるし……!
焦りながら、自分の名前を必死に探す。
ーーーーあ、あった……っ
廊下から2列目、前から3番目。宮藤柚の文字。
廊下から2列目、前から3番目………
何度も位置を確認して、忘れないように呪文のように心の中で唱えながら、私は与えられた自分の席についた。
……まあまあ端っこだし、よかった……黒板もよく見えるし…
鞄を下ろして、そっと教室を見回してみる。
……うん、やっぱり何か雰囲気が違う。
中学校にはいなかった、少しの大人っぽさを含んだ生徒がたくさんいた。
茶色く染まった髪がいかにも活発そうな男子や、雑誌のモデルさんがしているようなふわふわの髪に薄くリップを塗った女子ーーー
高校生になったんだなと、どこか他人事のようにそう思った。
ーーー柚、と突如呼ばれそちらに目を向けると、百叶が私の席まで来ていた。
笑顔で手招きする彼女の席には知らない女子が2人立っていて、同じように、にこりと笑ってこちらを見ていた。
百叶に連れられ彼女の席へ向かうと、2人はすぐに口を開いた。
「あたし土屋まりな、よろしく!ちな北中出身」
「吉田玲可です、よろしく。あたしもまりなと同じ中学なの」
栗色ボブに、ものすごく顔の小さいまりなちゃん。
アイドルのようなぱっちりとした大きな瞳に、ワンレンロングが印象的な玲可ちゃん。
突然始まった自己紹介に、私は頭の中で咄嗟にいつものようにメモ書きを始めた。
初対面でいきなり失礼があったらきっと嫌われるーーー
物心がついた頃から、私は周りの大人たちや友達の顔色をよく気にしていた。