直球すぎです、成瀬くん



「ただし、それ以外は全然好きじゃない、むしろ腹立つ、苛つく」


予想すらしていなかった言葉が次々と、成瀬くんの口から飛び出してくる。



(顔が)好きと言われたんだと認識した途端、驚きつつもあまりに突然、それもストレートに言われたものだから、顔が一気に火照るのを感じたーーーのも束の間、次もまたストレートに言われたので、私の頭の中はもう、収拾がつかない状態に陥った。



………どっ、ど、どうしたら………?

…な、何て返したら…………


もう何が何だかわからなくなった、盛大に散らかった頭の中で、私はそれに抗うように必死に頭を働かせようとした。



………が、私の頭は、そこまで優秀じゃない。

答えるべき正解なんて、そんなにすぐに出てくるわけがなかった。


……で、でも……な、何か……何か言わないと………



「……っあの…っ、」


いつの間にか下がっていた顔を上げて、目の前の成瀬くんに声をかけた。



………けれど、目の前には、既に誰の姿もなかった。


やっとの思いで口を開いた私は、ただ1人で、その場に立っていた。



……え、嘘……成瀬くん、いつの間に…………?


成瀬くんはもうこの場にいないと理解した私は、力なくその場にしゃがみこんだ。



………え、ど、どうしよう………?


好き(顔が)って、たぶん言われた……けどその直後に、好きじゃないって、言われた………よね………


………ど、どうしたら……どうするのが、正解………?


余計に頭の中がこんがらがるのを感じた私は、その場でつい視線を泳がせた。



…………あれ……?


泳がせた視線の先に、小さく折りたたまれた白い紙が落ちているのに気づいた。


…もしかして、成瀬くんが引いた、借りもの競争のくじ………?


私はそれに手を伸ばした。

……成瀬くん、一体何を借りるって書いてあったんだろう……


そしてそっと開いた。



〝数学の先生〟


「………」



開いた紙に書かれていたものは、これも予想すらできなかったもの。


…っな、……というより、これ全然私じゃないじゃん………!



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