直球すぎです、成瀬くん



私はふと、交流会の初日、勉強時間に成瀬くんと席が隣になった時のことを思い出した。


……もしかして、私が数学苦手なの、気づかれてた…………?



……そっか、そういうことか………


きっと成瀬くんは、私が数学ができないのを知っていて、あえて『数学の先生』で私を連れ出したんだ。

からかわれたんだ、私、そうだよ……



さっきのも、きっとそう、からかったんだ、私を………

だって、成瀬くんが、私を好きだなんて、どう考えてもおかしいもの、そもそも接点はほぼなかったし、あったとしてもどれも雰囲気は最悪に近かった……

成瀬くんが私を好きになる要素なんて、どこにもない。


そう考えたら、何だか全て納得できた。



………あぁ、可笑しいな。

一瞬でも、本当に告白されたのかもと照れた私を思い出すと、どうしようもなく恥ずかしくなった。


どうしてすぐに、からかわれてるって気づけないんだろう、私は……


手のひらの小さな紙に書かれた文字をぼんやり眺めながら、私は大きく息を吐き出した。







「っあーーいた!柚いたよ!!」

「っ、!」



突然背中から大きな声が聞こえて、私は反射的に立ち上がった。



「もー!何でこんなとこにいんのよ!」

「…まりなちゃん…」


振り返るとそこには、少し息を切らしたまりなちゃんを先頭に、百叶と玲可ちゃんもいた。


「成瀬くんに連れて行かれてから全然帰ってこないから、まさか何かされてるんじゃないかと思って…」

「心配で、ずっと探してたんだよ、柚のこと」


あーでもよかった無事みたいで!とまりなちゃんは笑うと、私を思い切り抱き締めた。


「……ご、ごめんね、心配かけちゃって……」

「いーのいーの!ただちょっとびっくりしただけ」


ね、と私を離して振り返ったまりなちゃんは、後ろの2人を見た。



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