直球すぎです、成瀬くん
え?と驚く先生の目線の先には、小さく折りたたまれた白い紙を得意げに摘んで掲げる男子の姿。
「席替えしたすぎて先にくじ作っちゃってた」
「おっまえ仕事はえぇ〜〜さすがじゃん!」
「じゃーいいじゃん先生席替え今しようよ」
既にくじを作ったというその人の周辺の席の男子が口々にそう言う。
……先にくじを作ってたなんて……よほど席替えがしたかったんだろうな…
「せんせー、あたしも席替えしたーい、この席飽きたー」
「あたしも1番前やだ〜」
女子もそれに加勢し始め、先生は腕時計にちらりと目をやると、半ば諦めた顔で頷いた。
「……じゃあ、その作ってくれたくじでやりましょうか。1番前の人たちから順番ね」
「ぃよっしゃあ〜〜!」
その言葉に、前列の男子が腕まくりをしながら立ち上がる。
席替えをしたい気持ちが強すぎるのか、クラスは異様な団結力を見せ、くじ引きはすいすいと進んでいく。
比較的前の方の席である私の番もすぐに回ってきて、私は次の人の迷惑にならないようにさっとくじを引いてすぐに自席へ戻った。
開いた紙には数字が書かれていた。
今先生が黒板に書いている座席表にも、ランダムに数字が割り振られていっている。
先生が全ての席に番号を書き終えたのとほぼ同時に、クラスの全員がくじを引き終えた。
「はいじゃあ番号確認して移動ー」
それを合図に、ガタガタと荷物をまとめ始めるクラスメイトたち。
私も遅れないように、急いでまとめて席を立った。
入念に確認した私の番号は、1番後ろの、窓から2列目にあった。
それを忘れないように頭の中で唱えながら、その席へ向かった。