直球すぎです、成瀬くん



私は次の授業の準備をするべく、机に広げた教科書やノートを閉じた。

それを机の横に引っかけている鞄に仕舞おうとして、左手を鞄に伸ばした。


「……」


……な、成瀬くん……まだ、見てる………?


横目で隣の様子をそっと確認してみると、明らかに、成瀬くんの顔がこちらに向いているのがわかった。



……そ、そこまで見られると、何をするにも息が詰まる………



私は、勇気を振り絞って、成瀬くんを見た。


「……あ、あの……な、何でしょうか……?」


いつも通りの、感情の読み取れない表情。

頬杖をついた成瀬くんは、黙って私の方を見ていた。



……も、もしかしたら、私に何かゴミとかついてて、それを見てたとか……?


口を開いてしまってから急にそう思って、私は慌てて、鞄に伸ばしていた左手を自分の頭に持っていった。

ぎゅっと、触れた部分の髪を握る。




「……別に」

「……」


短くそう答えると、成瀬くんはおもむろに立ち上がり、いつものように教室を出ていった。




………っはぁぁ………


思わず止めてしまっていた息。成瀬くんの姿が見えなくなると、私はすぐに新しい空気を吸い込んだ。


……こ、こんなんで、しばらく席が隣だなんて…………

先が思いやられるよ………




「あ、柚ー」

「っ、」


そんなことを考えていたら、不意に声がした。

私は驚いて、その声の主を見上げた。




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