直球すぎです、成瀬くん



そんな私にも気の許せる友達もできたこともあり、学年が上がるにつれて少しずつ、自分の気持ちを人に伝えられるようになってきたある時。


いつも仲良くしている女子グループの中の1人が、みんなと違うことを言ってケンカになった。

きっかけは本当に些細で小さなことだったのに、その関係はあっさりと崩れた。


毎日あんなに楽しく笑って話していたその子はグループからどんどん孤立していき、最後には離れてしまった。話さなくなった。

私はそれがものすごくショックだった。


私は、それに対して何もできなかった。

怖いと、思ったからだ。


これをきっかけに私はまた、自分の気持ちを言葉にすることができなくなっていった。


怖かった。

あんなにも簡単に、脆く崩れてしまうのだと知ったから。


嫌われるのが怖い、嫌われたくない。


そんな思いが、私の中で次第に強くなっていった。





そうして、嫌われないようにずっと考えながら、とにかく相手に合わせることを徹底しながら今日まで生きてきた結果、今の私がある。

そのおかげか、これまでほとんど何事もなく平和に過ごせている。


学生女子は何がきっかけで関係が変わるかわからないことは、私なりに理解している。


だから初対面の相手には絶対に失礼がないように、いきなり嫌われないように、最低限名前と、その人のいいなと思ったところや特徴を頭の中にメモをする。



「西内百叶です。第一北中出身です、よろしくね」

「初めまして、宮藤柚といいます。同じく第一北中出身です、よろしくお願いします…!」


…そして、相手の目をちゃんと見て、笑う。


「よろしく、百叶、柚!」


笑顔で話せば相手も笑顔で返してくれる。

これまで何十回としてきた自己紹介で学んだことだ。



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