直球すぎです、成瀬くん



窓ガラスを次々と水が伝っていく。

水の筋はいくつも走っていて、ひっきりなしに上から下へ水が流れ落ちている。


その向こうで、傘をさして歩く人の姿もあった。


…集中していて、こんな大雨が降っていることに誰も気づかなかった。



「え〜ウソでしょ?傘持ってきてない〜」


「今日の予報曇りだったよね?」

「うん。あたしも雨降らないと思って傘持ってきてないわ」


窓に駆け寄り外を見つめるまりなちゃんを見ながら、2人は口々にそう言った。



私……傘、持ってる…


2人の会話を聞きながら、私はそっと自分の鞄に目をやった。


突然雨が降ってきた時のために、折りたたみ傘は常備している。

鞄の中で、いつも見る薄いグレーの袋が見えた。



……で、でも、さすがに、折りたたみ傘に4人は入りきらないよね………


大きめじゃない普通サイズの折りたたみ傘。2人ならまだ………頑張っても3人…………いやもっと頑張ったら4人入れる…………?


「あっ」


突然、玲可ちゃんが声を上げたので、私は少しびっくりした。

反射的に目を向けた玲可ちゃんの手にはスマホ。



「どしたの玲可」


窓の外から視線を移したまりなちゃんが声をかける。


「ねーちゃん、車乗せてくれるって!」

「え!」

「ちょうど仕事終わりで、まだ学校なら寄れるけどってLINE来た、ラッキー!」

「まじで?神じゃん!」


玲可ちゃんのお姉さん、何というタイミング…!


それなら玲可ちゃんはお姉さんの車で帰れるから、あとは3人で私の傘で……


「友達も一緒なら送るだって!3人とも乗ってきなよ!」

「ウソいいの?」



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