直球すぎです、成瀬くん



「ね、北中と第一北中て名前似てるのに場所全然違うじゃん?あたし入学式の前日までずっと勘違いしてて。こんな遠い学校通うのってずっと思ってたんだよね〜」


手に持っていたシャープペンシルを上下に振りながら、まりなちゃんは早速話し始めた。


「ほんと、びっくりするよねこの話。あたし初めて聞いた時まじかって思ったもん」


玲可ちゃんはその時のことを思い出したようで、口元を緩めながらまりなちゃんの肩をぽんと叩いた。


「私も、勘違いしそうになるのわかるよ。うちの中学も略して北中って言ってたし」

「うん、に、似てるもんね、確かに…!」


相槌を打った百叶に、私もすぐに続いた。


「そうそう!みんな略すから余計紛らわしくてさ!」


まりなちゃんは、ホラあたしだけじゃなかったじゃん、と隣の玲可ちゃんを肘でつつく。





ーーーそれから数分経って、




「うん、そうだよね〜!」



「わ、わかるよ〜」



…どんなに相手に合わせることを意識しても、単純な言葉だけで返さないように頑張っていても、会話が長期戦になるとあっけなくテンプレの相槌しか出てこなくなってしまう。


こうなってしまったらもうとにかく、相手の顔色をよく見て、せめて声のトーンだけでも合わせられるように、常に雰囲気を感じ取る。

そして笑顔は、絶対に忘れないこと。




ーーー「はいみなさん席についてー」



……15分くらい話していただろうか。

そこそこの長期戦の末、教室に女性の先生が入ってきた。


せ、先生ありがとうございます………!

私は思わず心の中で手を合わせた。


じゃまたね、とまりなちゃんと玲可ちゃんが自席に戻っていくので、私も戻った。



「入学おめでとう。今日の入学式とその後の動きについて連絡するので、よく聞いてくださいね」



そう、私は今日から高校生になったんだ。

もうちょっと、上手い相槌とか会話の仕方とか、身につけていかないとだめだなぁ……


先ほどの、無惨にも単純な相槌しか出てこなくなった自分を思い出す。

高校生になったんだから、また今日から色々と頑張らなきゃ……



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