直球すぎです、成瀬くん
………え、う、うそ………………!
祈る思いで開いた紙の右上に赤で書かれていた数字はーーー『86』
今まで、数学でこんな点数取ったことない………!
………え、私のテストだよね?合ってるよね……?
慌てて名前を確認する。
間違いなく、宮藤柚、の文字。
わ、私のだ………私、苦手な数学で、初めての……
「…86点」
「………」
頭の上で、ボソリと聞こえた低い声。
はっと顔を上げて答案用紙から視線を移すと、答案を受け取り戻ってきたところの成瀬くんの姿があった。
………ていうか今、86点って………!
え、も、もしかして、見られた……!?
慌てて、点数が書いてある面を裏返して隣を見ると、座った成瀬くんは若干苦い表情を見せた。
「…い、今、見ましたか……?点数……」
自分以外の人に、それもよりによって成瀬くんに数学の点数を見られてしまったことに動揺を隠せなかった私は、普段であればそのまま黙ってやり過ごせるのに、よりによって自分から質問してしまうというおかしな行動に出てしまった。
訊いてしまってから、しまったと口に手を当てた。
私、何てことを………
「見たんじゃなくて見えたんだよ。誰がおまえの点数に興味あんだよ」
「……」
あっけなく答案用紙を折りたたむと、それを鞄にしまった成瀬くんは冷たくそう言い放った。
な、な…………!
何この人………!だったらわざわざ口に出さなくたっていいのに………!
足を組んで窓の外に目を向ける成瀬くんに、私は心の中で、声にならない声を上げた。