直球すぎです、成瀬くん



入学式は無事終わり、翌日。いよいよ今日から高校生活が始まる。


とは言っても、今日はほとんど学校の規則や授業についての説明がほとんどで、授業らしい授業はひとつもない。

それなのに新しい環境だからか、私は終始肩の力が入りっぱなしの初日を過ごした。




「柚ー、帰ろ」


やっと放課後になり、少し放心状態の私のもとに百叶が声をかけてきた。


「うん、帰ろ〜」


7時間授業って、思ってた以上に大変だ……私、大丈夫かな………


1人頭の中でそんなことを考えながら、荷物をまとめて百叶と教室を出る。



「週3で7時間授業ってしんどくない?」


途中まで一緒の帰り道を歩き始めてすぐ、百叶が軽くため息を漏らした。


「…え、わ、私もおんなじこと思ってた」

「ね、今日なんて授業ぽいことほぼやってないのに…」


大丈夫かな、と百叶は眉を下げて少しだけ笑った。


「…やっていけるのかなぁ…」


私も同じようにため息を落とすと、何となく視線も一緒に下がってきた。



「…けど、頑張るしかないよね…!」


先ほどまでのトーンからうってかわって、明るい声が隣から聞こえた。


百叶のすごいと思うところは、落ち込んだり何か大変なことが起きたりしても、こうしてすぐに切り替えができるところ。

対して私はずるずると引きずってしまう方。


こういう時、百叶がこうして声をかけてくれるおかげで、私は自然と落ち込む時間が減った。

1人だとずーーっとぐるぐる考え込んで、どんどん悪い方向暗い方向へ行ってしまうけれど、百叶の明るくて前向きな言葉はいつも私に顔を上げる力をくれる。

私はいつも、百叶にたくさん助けてもらっている。



「…そ、そうだよね……!」


こういうところも、私が百叶に憧れている理由のひとつ。



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