直球すぎです、成瀬くん



「じゃあ、生地はここで買うとして…」

「えーでもさ、あたし裁縫できないよ?」

「あたしも得意じゃない〜」


衣装係のリーダーの女子が次の話に切り替えようとしたタイミングで、数人が突然口を開いた。


「え、じゃあ何で衣装係なったのよ」

「え、何か楽しそう〜って思って」

「あたしも〜」

「えー嘘でしょ、頑張ってよー」


困った顔のリーダーに、百叶も悩んでいる顔を見せている。



……ど、どうしよう………

百叶のおかげでスムーズに話が進んでいたのに……



……私、裁縫なら得意な方だから、その子たちの分も私が頑張るって言ったら、上手く収まる………?


……いやでも、私なんかがこんなところで出しゃばっても、意味ない……よね、どうしよう………



「何騒いでんのー?」

「っ、!」


突然、頭上から明るい声が降ってきて、思わずビクリと肩が上がった。



「玲可!」

「何なに〜衣装決め揉めてんの?」

「揉めてないよ〜、衣装係なのに裁縫できないって言う人いるからさあ〜」

「何ソレっ、じゃあ調理係来る?」

「それはもっとできない〜!」


突如現れた玲可ちゃんの姿に、女子たちは一気に盛り上がる。



玲可ちゃん、クラスの女子みんなと仲がよくて、クラスのどの輪に入ってもすぐに馴染んでしまう。それは、まりなちゃんも然りだけれど。



「裁縫できない人いるんだったら、衣装買っちゃえばいいじゃん」

「や、買うと高いじゃんって話になって」

「え、あたし知ってるよ、安く買えるとこ」

「うっそどこ!?」

「え、ちょっと待ってー」


手に持っていたスマホを操作し始める玲可ちゃんに集まる女子。

百叶もその画面を見に立ち上がったので、私もそのあとに続いた。



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