直球すぎです、成瀬くん



「ね、うちの学校、イベントが結構盛り上がるらしいじゃん、すごい楽しみ〜!」


まず何だっけ、体育祭?と声を弾ませる百叶。


「そうみたいだよね、私も、楽しみ…!」


中学生の頃に参加した学校説明会の時にそんな話があったし、百叶と見に行った文化祭もすごく賑やかだったのを覚えている。



…やっぱり私、高校生になったんだなぁ……


この言葉は昨日から何度目か……また頭に浮かんできた。



「色々大変なこともあるだろうけどさ、一緒に頑張ろ、柚」


百叶はそう言って、握りこぶしを作ってみせた。唇の両端がきゅっと上がる。


……この笑顔も、私に元気をくれる。

私はそんな彼女が、本当に大好きなんだ。



「うん、頑張ろう…!」


私も、できる限りの笑顔でそう答えた。


「〜〜っもう可愛いなあ〜〜〜」

「えっ、えっ?」


突然百叶の両手がこちらに伸びてきたかと思ったら、その手は私の黒いセミロングをわしゃわしゃとかき乱した。


「え、ちょっ、百叶!?」


驚く私の乱れた髪を丁寧に整えてくれた百叶は、ごめんごめん、と手を合わせた。


「じゃあ、また明日ね」

「…あ、うん、また明日…!」


気づけば分かれ道の交差点まで来ていた。

百叶は背中まである、長い艶々の髪をなびかせながら手を振った。

私も彼女に手を振り返して、家へと向かった。





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