直球すぎです、成瀬くん



すぐそばには、自分の教室。


恐る恐る近づき中を覗いてみると、外からの灯りが漏れ出しているも、やはり薄暗い教室。


ーーーその窓際に、人の影があった。



「……何見てんだよ」

「っ、!」


低い声が飛んできて、私は思わず身を硬くした。



「……な、成瀬、くん……」

「……」


その声でわかった。


窓台に腰をかけていた成瀬くんは、いかにも気怠そうな声色でそう言った。


すぐに目を逸らし、窓の外に目をやった成瀬くんの横顔がぼんやり浮かんだ。私は吸い込まれるようにそれを見ていた。



「……は、花火……もうすぐ、始まります、けど……み、見に行かないんですか……?」



この状況で何も言わずに去るのが何となくしづらくて、私は何とか絞り出した言葉で成瀬くんに話しかけた。



「……ああいうごちゃごちゃして騒がしいのは嫌いだ」

「……」


外を見たまま、静かに、けれどハッキリ、成瀬くんは言葉を口にした。



〝嫌い〟



「……どうして、成瀬くんは、そんなにハッキリ、言葉にできるんですか…?」

「……あ?」


気づけば無意識のうちに、口を開いていた。


「…好きって言うのは簡単だけど、嫌いなんて、どうしてそんなにハッキリ言えるんですか…?」

「…別に、好きも嫌いも同じだろ。簡単も難しいもねぇよ」

「…人から、どう思われるかとか、嫌われたくないとか、そういうこと、考えたりしないんですか…?」

「……おまえ、さっきから何言ってんの?」

「私は、嫌われるのが、怖いです」



私の口からは、何か堰を切ったように、次々と言葉が溢れ出てきた。




< 92 / 132 >

この作品をシェア

pagetop