直球すぎです、成瀬くん
すぐそばには、自分の教室。
恐る恐る近づき中を覗いてみると、外からの灯りが漏れ出しているも、やはり薄暗い教室。
ーーーその窓際に、人の影があった。
「……何見てんだよ」
「っ、!」
低い声が飛んできて、私は思わず身を硬くした。
「……な、成瀬、くん……」
「……」
その声でわかった。
窓台に腰をかけていた成瀬くんは、いかにも気怠そうな声色でそう言った。
すぐに目を逸らし、窓の外に目をやった成瀬くんの横顔がぼんやり浮かんだ。私は吸い込まれるようにそれを見ていた。
「……は、花火……もうすぐ、始まります、けど……み、見に行かないんですか……?」
この状況で何も言わずに去るのが何となくしづらくて、私は何とか絞り出した言葉で成瀬くんに話しかけた。
「……ああいうごちゃごちゃして騒がしいのは嫌いだ」
「……」
外を見たまま、静かに、けれどハッキリ、成瀬くんは言葉を口にした。
〝嫌い〟
「……どうして、成瀬くんは、そんなにハッキリ、言葉にできるんですか…?」
「……あ?」
気づけば無意識のうちに、口を開いていた。
「…好きって言うのは簡単だけど、嫌いなんて、どうしてそんなにハッキリ言えるんですか…?」
「…別に、好きも嫌いも同じだろ。簡単も難しいもねぇよ」
「…人から、どう思われるかとか、嫌われたくないとか、そういうこと、考えたりしないんですか…?」
「……おまえ、さっきから何言ってんの?」
「私は、嫌われるのが、怖いです」
私の口からは、何か堰を切ったように、次々と言葉が溢れ出てきた。