直球すぎです、成瀬くん
「…小さい頃からずっと、怖くて……だから嫌われないように、とにかく必死でした。周りの子の顔を見て、表情を読み取って、声のトーンで感じ取って……嫌われないように…それだけを考えて、みんなに合わせていたら、嫌な顔をされることも、怒りの矛先を向けられることもなかった」
「……」
「笑って、みんなと同じだって話せば、みんなも笑って、一緒だねって言ってくれた。それが、すごくほっとしたんです…私の居場所は、ちゃんとここにあるんだって、思えて…」
「……」
………って、わ、私、今、何を………………?
ど、どうして急に………しかも、相手は成瀬くん…………こんなこと、言うつもりなんて全然なかったのに…………!
「…っあ、あの、ごめんなさい、今のは」
「嫌われたくないって、そんなん無理だろ」
「………え…」
慌てて取り繕おうと口を開いた私に返ってきたのは、思ってもいなかった言葉で、そしてとても冷たかった。
「自分の周りにいるやつ全員、自分のこと好きじゃないといけねぇのかよ、そんなんありえねーわ」
さらに続けられた言葉に、私はただ、ぼんやり照らされたその横顔を見ることしかできない。
………そんなこと、考えたこと、今まで一度も………………
成瀬くんは鼻で笑うと、こちらを向いた。
「嫌われるの怖いならさっさと戻れば?友達待たせたら嫌われるんじゃねーの」
……そ、そうだよ、早く、戻らなきゃ…みんな、待たせてる…………
そう思うのに、私の足は鉛のように重たく、少しも動く気配がない。
「………好き嫌いなんて、他人が決めることだろ。自分で操作して決めれるもんでもねーし」
「……」
「嫌いと思ってきてるやつ、こっちだってよろしくやるつもりねぇよ」
「…な、んで、そんな風に、思うんですか……?」
「うるせぇよおまえ。いい加減戻れよしつこいな」