直球すぎです、成瀬くん
………あ、
不意に周りの空気が動く気配がして、信号機を見たーーー青に変わっている。
「……っ、え……な、何で……」
横断歩道を渡ろうと右足を前に出しかけたところで、足が止まった。
前方にいた成瀬くんが、なぜか振り向き私を見ていた。
「……」
何も発さない成瀬くんは、ただ私を見ている。
「……あ、あの………」
「すげぇ念を感じて振り返ったら眉間にすげーシワ寄せてるヒトがいた」
「……、」
その沈黙に耐えかねた私が口を開いたら、表情ひとつ変えない成瀬くんが一息でそう言った。
………ね、念、って…………
…た、確かに、成瀬くんの言葉を思い出して色々と考えてはいたけれど………
「……あ、」
返す言葉に迷っているうちに、成瀬くんは既に歩き出し、人の中に消えていった。
……ま、まただ…………初めて顔を合わせた、あの時と一緒…………
私は小さく息をつくと、鞄を持ち直して歩き始めた。
……嘘ついて笑ってるわけじゃない…
嘘をついて、みんなと一緒にいるわけじゃない……
4人でいる時は本当に楽しいし、時間もあっという間に過ぎる。
だから、あの気持ちはきっと嘘じゃない……はず。
…嘘じゃないって、私自身がちゃんと思えたらいいんだ。
今まで、確かに周りに合わせることが多かったから、きっと自分の気持ちに自信が持てないだけで、本当の私も、ちゃんと楽しいって思ってる。
4人でいる時の私はちゃんと本当の私だって、私が証明できればいいんだ…………!
何だか一筋の光が見えたような気がして、私の足は心なしか軽くなっているような気がした。