直球すぎです、成瀬くん
「柚帰ろー」
「……っあ…」
机の上がまだ片付いていない私のもとに、赤いマフラーを巻いた百叶が声をかけに来た。
「…あれ、作業中?」
「…あ、うん……まだ、日直の仕事終わってなくて…」
広げた日誌に、百叶が視線を落とした。
「そうなの…?」
言いながら鞄からスマホを取り出した百叶は、画面を見ると再び私を見た。
「10分くらいなら手伝えるよ、私。何かできることある?」
用事があるからそこまで残れないけど、と付け加える。
「え……でも…」
今残ってる仕事………日誌、ゴミ捨て、担任に頼まれた本の返却………
………ど、どれも、そんな簡単にお願いしていい内容じゃない………
「…だ、大丈夫…私1人ですぐ終わるし……ありがとう、用事優先して…?」
「ほんとに?すぐ終わるの…?てか、成瀬くんは?」
席が隣同士の生徒でやることになっている日直。
がらりと空いている私の左隣の席に視線を移した百叶が、怪訝そうにそれを見ている。
「か、鞄、あるし、戻ってくると思う……だから、大丈夫だよ」
……確かに鞄は残っているけれど、すぐに戻ってくる保証はない………だから諦めて、私1人でこれらを終わらせるつもりでいた。
「……そっか……じゃあ、ごめん、今日は先に帰るね」
「ううん、気をつけてね」
頑張ってね、と手を振ってくれた百叶に手を振り返して、私はまた、日誌と向き合った。