直球すぎです、成瀬くん
………よし……
握っていたシャーペンを置き、ふっと息を吐く。
どう書こうか悩みすぎたせいで、書き上がるのに時間がかかってしまった日誌を見つめる。
……へ、変な内容には、なってないはず………
ふと、外から聞こえたホイッスルの音に耳を傾ける。
窓から一望できるグラウンドは、放課後はサッカー部が使っていたはず……
……そっか、もうそんな時間か…
黒板の上に掛けられた時計を見ると、思った以上に時間が経っていたーーー通りで、廊下にもほとんど人気がないわけだ…
…よし、これを職員室に持って行って………
立ち上がったタイミングで、教室前方のドアがガラリと開いた。
「……え…、」
「…何おまえ、まだ残ってんの?」
言いながらどんどんこちらに向かって歩いてきて、掛けてあった鞄を掴むと、私の机の上を一瞥した。
「……な、成瀬くん…………あ、あの、まだ……というか……に、日直の、し、ごと………」
「……」
視線が刺さっている気がして、語尾がどんどん小さくなる。
「………悪い、忘れてた」
「……っえ……、」
まさか成瀬くんの口からそんな言葉が出てくるとは思ってもいなかった私は、すぐに反応することができず硬直する。
そんな私をよそに、あと何?やること、と持っていた鞄を机の上に放った。
「……」
「訊いてんだけど。あと何?」
「っあ、と、ご、ゴミ捨てと、本の返却です…」
「じゃあゴミ行ってくるわ」
「…え………」
そう言うと、成瀬くんは早々とゴミをまとめて教室を出ていった。