星の向こうで待つあなたのもとへ
この日は七夕で、小児外科には子どもたちが願い事を書いた短冊が飾られていた。きっと夜にはまた美しい天の川が見えるんだろう。

「先生、私はあとどれくらいしか生きられないんですか?」

私の目から何故か涙は出なかった。末期のがんと言われてショックはあるはずなのに、悲しいとは思っていない。

「あと一年ほどでしょう」

「そうですか……」

私は治療することを拒否し、自宅で残りの時間を過ごすことを選択した。

しかし、がんのことを話すと両親と妹は「治療してほしい」と懇願してきた。身体中に転移しているというのに、両親たちは希望を捨てなかった。だから、私は通院して治療をするという方法を選び、過ごすことを家族と話し合って決めた。



でも、やっぱり私の体はがんに勝つことはできなかった。家で倒れ、私は今こうして病室のベッドの上で最期を迎えようとしている。

お父さん、お母さん、そんなに泣かないでよ。私の人生は幸せだったんだから……。そう言いたいけど、口はもう動かせない。
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