アリサはもう逃げられない
「芋虫、アリサの手を離したらどうだい?アリサ、このクッキーを食べよう。おいしいから」

紫の耳と尻尾を揺らしながらチェシャ猫が亜梨沙と芋虫の手を引き剥がす。そして亜梨沙に「eat me」と書かれたクッキーを差し出した。

「ありがとう!いただきます!」

亜梨沙はニコリと笑い、クッキーを食べる。体が大きくなることはないが、ゲームの中だというのにおいしさを感じる。

「おいしい!」

亜梨沙がそう笑うと、マッドハッターたちの頬が赤く染まっていく。現実にいる男子よりもかっこよくて可愛い男子キャラたちに、亜梨沙はこの世界で生きれたら幸せなんじゃないかと一瞬思ってしまった。

「お茶会中失礼いたします。アリサ様、陛下がお呼びです。至急、大広間に向かってください」

お茶会を楽しむ亜梨沙にトランプの兵士が話しかける。亜梨沙は「わかりました。すぐに向かいます」と言って立ち上がった。

「アリサ、新しいお茶を入れておくよ。君の大好きなフレーバーティーを用意しよう」
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