アリサはもう逃げられない

「俺たちはみんな君の虜。この話だけは早く決めてもらうよ。誰と結婚する？」

芋虫がバラの花束を亜梨沙に差し出し、妖艶に微笑む。その次にチェシャ猫が言った。

「結婚するのはもちろん俺だよね？俺と同じ色のアメジストのネックレス、つけてくれるんでしょ？」

「いや、エメラルドの方がいいよね？」

マッドハッターがそう言い、チェシャ猫を押しのけて亜梨沙を見つめる。ハートの国の王が「さあ、選んでもらおう」と言い視線が亜梨沙に集まった。

全員からプロポーズされるなど、あり得ない展開だ。こんな出来事、現実では決して起こらないだろう。亜梨沙の胸はドキドキ高鳴っている。

しかし、このドキドキが恋愛ではないと亜梨沙は心の底からわかっていた。亜梨沙には好きな人が現実にきちんといる。その人と付き合えたらどんな感じになるのだろうかと恋愛シミュレーションゲームを始めたのだ。だから、亜梨沙の答えはたった一つ。

「皆さん、ごめんなさい！！私には他に好きな人がいるんです！！」