17時、カフェオレ。
***
走っても走っても全然紫那はいなくて、俺は優奈ちゃんに言われたホテルへと到着した。
…ここで、いいんだよね?
ほかに駅前にホテルって、ビジネスホテルとかしかないし…
俺は恐る恐る、ホテルに入った。
制服でこんなホテルに入るとか、場違いにもほどがあるけど
もし、ここで紫那に会えたら…と思ったら
勝手に、自動ドアが開いた。
「……え?」
そのドアが開いた瞬間
俺の会いたかった人はそこにいて
「え、理玖!?」
…だけど、紫那は1人じゃなくて
「あ、えと
この人はねっ…」
そう紹介しようとした紫那の手の薬指には、さっきまでなかった指輪が光り輝いていた。
「……言い忘れたこと、言いに来ただけだから」
そんな光景をみたら、誰だってわかるよ。
紫那、その人と結婚の挨拶をしに、日本へ帰ってきたんだって。
俺に会いにきたのなんか、ついででしかないんじゃん。
ってか付き合ってたの、俺だけだったのかな。
「さよなら、紫那。
気を付けて」
俺は笑顔でそう言って、ホテルを出た。
この時期のこの時間はもう暗くて
キラキラと輝きを放っていた。