17時、カフェオレ。
先輩は、その次の日ももちろん17時に喫茶店へとやってきた。
…でも、とくになにかあるわけでもなく
「いつもの、ください」
たったそれだけ、優しく言っただけ。
一切、私の方も見ないし、私に話しかけてくることもない。
以前に戻ったみたいな、私が一方的に見てる関係になった。
次の日も、その次の日も
それだけは、なんの変化もなかった。
そんな日が続き、10月に入ってすぐ
うちの高校では文化祭の準備が始まった。
「えー、うちのクラスはなにがやりたいですかー」
やる気のない文化祭実行委員がクラスにそう問うけど、誰もなにも発言しなかった。
「おーい、誰か何か言ってよー」
「そういうお前はなにかないのかよ」
「俺?俺は楽なやつならなんでもいいよ」
…本当、やる気ない実行委員…
もうちょっと燃える人いなかったの?
「優奈、カフェやりたくない?」
後ろから、未希がそんなことを言ってくる。
「え、カフェ?」
「そうそう、優奈経験者なんだし、いろいろアイディア出してさ。
それで、あの先輩誘ったらどう?」
あの先輩って、理玖先輩のことだよね…
無理だよ。先輩とはあの日からか言わないもん。
先輩がまた彼女の好きなカフェオレを飲む日々に戻ってるもん。
「それでさ、優奈紅茶淹れるのうまいんだし
そういうので先輩にアピールすればいいじゃん」
「…え、紅茶で?」
「そうそう。
あとケーキとかさ。優奈そういうの得意じゃん。
日頃から接客もしてるわけだし」
紅茶でアピール、か…
先輩は、カフェオレ以外そういうの飲むのかな…
もし、カフェオレより
私の淹れた紅茶の方がおいしかったら
カフェオレから紅茶に乗り換えたりしないかな…
「ね、優奈」
「…うん」
私は未希に押され、私は頷いた。
このまま、なにもしないなんて嫌だ。
このまま近づけなくなるなんて、本当は嫌なんだ。