塩対応彼氏の恋愛事情。
「来てないのか。なら休みだろ」
握りこぶしに力が入る。
彼氏なら、一緒にいんなら、それくらい知っとけよ…。
「…それだけっすか」
「用がないなら戻───」
踵を返し、葛西さんの元へ帰ろうとする水瀬さんを止めた。そして……
「…アンタ、最低だな。」
その傷一つない綺麗な顔に、手をあげた。
篠宮には後で謝っておこう。
…好きな男をぶん殴った男なんて、もう友達とすら呼んでくれないだろうけど。
「知ってる。」
返ってきた言葉は意外なものだった。
「俺が最低で、莉茉が苦しんでるのも。…俺らのその隙を狙っている奴らがいることも全部。」
“奴ら”
それには俺も含まれているんだろうけど、他は誰なんだ。