灰色メメント
「この子は、私達が孤児院から引き取った子なんです。妻の病気で、子供がいなかったもので」



なるほど、確かにこの老夫婦の年齢からして、この娘は小さすぎる。



「この子は、私達の天使でした。いつでも私達の雰囲気を明るくしてくれた、それこそまるで野に咲く花のように可愛らしい娘で……」



すっかり冷えきってしまったであろう彼女の頬を愛しそうに撫でるしわだらけの手は優しく、こちらにまで愛が伝わるようだった。



しかし、その頬には『彼女から吸い取った生気で育った』あまりにも美しすぎる小花が咲き誇っている。



「お任せ下さい」



彼女の時間を、完璧に、この美しい姿のままで止めてみせる──────。



「少し、お待ち下さいね」



そういい、何を考えているか分からない不思議な笑みを浮かべた”小さな店主”は、ルビアを抱え、店の奥に消えていった。


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